働く女性たちの未来を拓く:「社外メンタープログラム」体験談(前編)
日清製粉グループ様は「女性社員の活躍が企業の成長を支える重要な要素」という信念から女性の雇用促進を進めてきました。しかし、新卒採用で女性社員の割合が増え始めたのは10数年前のこと。現在、その世代の社員が管理職やマネージャーに昇進し始めていますが、ロールモデルとなる先輩が少なく、多くの女性社員が悩みながらキャリアを築いている状況に課題を感じていました。そんな現状を少しでも変えたいという思いから、グループ会社の垣根を超え、初めて「社外メンタープログラム」を導入頂きました。
今回は、そんな日清製粉グループ様の社外メンタープログラム実施について、執行役員の坂本様、本プログラム事務局、実際に参加頂いた一部の社員(3名)の皆様にお話を伺いました。
【対談】
◾️(株)日清製粉グループ本社 執行役員 坂本様
◾️事務局:(株)日清製粉グループ本社 落合様、石塚様
◾️参加者:波多野様、小山様、仮屋崎様
「社外メンタープログラム」を導入しようと思ったきっかけや経緯
—プログラム導入の背景を教えてください。
坂本さん : 私たち当社グループは、女性社員の活躍が企業の成長を支える重要な要素であると信じています。これまでの取り組みで新卒採用における女性比率は順調に増加してきましたが、管理職を目指す段階で不安を抱える社員が多くいることが課題としてありました。その理由として、彼女たちのロールモデルとなる社員も少なく、管理職後の具体的なキャリア像を描きづらいのではないかという問題が挙げられました。
この不安を解消し、確かなキャリアを築く手助けをするためには、社外の女性メンターとの対話は非常に有効だと考えました。彼女たちがロールモデルを見つけ、社外で活躍する女性と話をしていただくことで彼女たち自身が活路を見いだせないかということで、本プログラムを導入しました。
導入に際しては当初、社内の状況を十分に把握していない社外メンターの方々が当社女性社員に受け入れられるか、また、当社女性社員が自分の思いを率直にメンターに話をしてくれるかについて、一抹の不安がありましたが、いざプログラムをスタートしてみると、社外メンターの方々が一人ひとりの女性社員の成長を心から応援してくださっている様子が見て取れ、安心してプログラムを進めることができました。
—なぜ、弊社にご依頼いただいたのですか?
事務局 : 本格導入の前のトライアルで、参加者が「一人ひとりに合ったアドバイスをしてくれた」ととても感動していて。その姿をみて、アーチ・キャリアさんにお願いしようと決めました。
とはいえ、導入には社内から不安の声もありました。「社外メンターと関わることで社員の目が社外に向いてしまうのではないか」という懸念もあったからです。
しかし大切なのは、社員一人ひとりの人生がより良くなること。
アーチ・キャリアさんのプログラムは、個別のメンタリングだけでなく座談会も組み合わせた構成になっているため、参加者同士の交流も生まれます。
必ず社員のため、そして会社のためになると信じて2年ほどかけて準備を進め、導入が実現しました。
—プログラムの概要を教えてください。
事務局 : 3回の個別メンタリングと、3回の研修・座談会を組み合わせたプログラム構成です。プログラムには日清製粉グループに属する異なる会社から、中堅の女性社員が参加しました。
プログラム開始前にはアーチ・キャリアさんが参加者一人ひとりに適したメンターのマッチングを丁寧に行ってくださいました。
プログラム参加者の体験談
ープログラムに参加しようと思った理由を教えてください。
参加者 波多野さん(以下、波多野さん) : このプログラムの募集があったのは、ちょうど育休が明けて仕事に復帰したばかりでした。その頃は毎日「子どもが熱を出して保育園から呼び出しがあったらどうしよう」という不安を抱えながら日々を乗り切ることに必死で、自分のキャリアを考える余裕なんてなかったんです。
一方で、「このままでいいのだろうか」といった漠然とした不安が自分の中に蓄積されていることを感じていて…。
そんな時、このプログラムを勧められ、自分の今後を考えるいい機会だと思い参加を決めました。
参加者 小山さん(以下、小山さん) : 私は営業職として働いています。職場では女性の後輩社員が徐々に増えてきていますが、出産後に復帰した営業職の女性社員はまだまだモデルケースが少ないのが現状。
後輩たちから「女性のキャリア形成の道を切り開いてほしい」という期待を感じながら、私自身も探り探りの状態でどう進めばいいのか悩んでいました。
社内ではこれまでにもキャリア形成を考える研修はありましたが、どこか皆が正解を意識して発言しているような感覚があって。でも、家庭の状況や挑戦したいことは人それぞれ異なるはず。
社外メンターなら話したことは絶対に外部に漏れないという安心感のある中で本音が話せるのではないかと思い、参加を決めました。
—メンターにはどのような印象を受けましたか?
波多野さん : 私はこれまで主に海外事業に関する業務に携わってきましたが、出産後はさまざまな制約が増えて、このままキャリアを積むのは難しいのではと悩んでいました。
私のメンターは海外関連の仕事経験もあり、子育てしながらキャリアを積んでいる方で、まさに理想通りのメンターをマッチングしていただきました。仕事に対する姿勢も尊敬でき、今では私のロールモデルの1人となっています。
参加者 仮屋崎さん(以下、仮屋崎さん) : メンターさんは、すごくポジティブで前向きな考え方を持っていることが一番印象的でした。
私の取り組みに対して肯定的に受け止めてくれたうえで、「こうしてみたらどう?」と自分では気づかなかった角度から意見をいただくことも多くて。そのおかげで、自分も前向きに物事を考えられるようになりました。
小山さん : 私のメンターは役員まで務め上げた且つ子育てをしながらキャリアを積んできて、人としてもとても尊敬できる方でした。
それに、自分の中にあるけれど、自分では認識できていない考えを引き出すのがとても上手で、言語化を助けてくれる能力が素晴らしかったですね。話しているうちに自然とモヤモヤを言語化できていて、自分の気持ちに気づかせてもらえました。
前編ではプログラム導入の経緯やプログラムへ参加したきっかけ、メンターの印象を話していただきました。
後編では、プログラムでの体験や感想、今後の展望を伺います。
(取材日/2025年2月19日)
執筆:田中亜由美