キャリアと自分自身に向き合う場所:「社外メンタープログラム」体験談(前編)

三井金属株式会社様では、女性活躍推進を重要な経営課題と位置付け、意思決定層における女性比率の向上や、女性社員が長くキャリアを築ける環境づくりに取り組んでいます。一方で、社内の男女比がおよそ8対2と女性が少なく、事業所が全国に分散していることもあり、女性社員同士が横につながり、キャリアについて率直に話し合える機会がなかなか生まれにくいという課題がありました。

そこで今回、同社では初めて「社外メンタープログラム」を導入しました。社員一人ひとりが自分らしいキャリアを歩むきっかけにしてほしいという思いから始まったこの取り組み。プログラムを通じて参加者にどのような気づきと変化が生まれたのでしょうか。導入の背景から参加者の体験まで、じっくりとお話を伺いました。

 

【対談】

◾️人事部 ダイバーシティ推進室 副室長:小宮様

◾️事務局:本川様、松本様

◾️参加者:添田様、渡邊様


プログラム導入の背景

 

—プログラム導入の背景を教えてください。

 

人事部 ダイバーシティ推進室 副室長 小宮さん(以下、小宮さん):当社は鉱山の採掘・製錬を祖業とし150年近い歴史を持つ製造企業です。金属製錬の他、高機能材料やリサイクル等、主力事業や商品が変化し続ける中で、多様な人材がいきいきと働き、その力を最大限に引き出すことが、持続的なイノベーションや企業価値向上の源泉になると考え、DE&Iを経営戦略として推進しています。

特に女性活躍推進については、当社において最も身近なマイノリティである女性が活躍できなければ、誰もがいきいき働ける会社にならないと考え、近年、採用や職域拡大、キャリア開発支援に力を入れてきました。元々、女性の割合自体が世間と比較してかなり少ない会社ですが、女性従業員比率は直近5年間で11%から15%まで増えました。一方、経営層や管理職層においてはまだまだ割合が少なく、増加した人材の着実な育成と登用が今後のテーマとなっています。

女性従業員の比率が着実に高まり、キャリア採用や内部登用を通じて女性管理職も増えつつある中で、これまでも個別の育成や支援には取り組んできましたが、より広く継続的に、体系的に支援していく必要性を感じていました。

また、社内での女性交流会などを通じ「横のつながりを持ちたい」「ロールモデルや他の視点に触れたい」といった声も多く、社内にはロールモデルが殆どいない中で、社内だけでは得にくい気づきや支えが求められていることも見えてきました。

こうした背景を踏まえ、社内交流も交えつつ、自己効力感を高めてもらう施策として、社外メンタリングに着目しました。社外のメンターだからこそ可能なフラットで率直な対話や、多様な価値観との接点は、自身のキャリアや強みを見つめ直すきっかけになると考えています。

単なる個人支援にとどまらず、参加者同士のつながりや、上司の関わり方の変化も含めて、組織全体にポジティブな影響を広げていきたいという想いから、本プログラムの導入を決めました。

 

—弊社を選んだ決め手はどのようなところでしたか。

 

事務局 本川さん(以下、本川さん):アーチキャリアさんが支援されていた他社の事例を以前から存じ上げており、柔軟性の高い会社だという印象を持っていたので、最初にお声がけさせていただきました。

そこで、アーチキャリア代表の井本さんが、ご自身の言葉でメンタリングの効果や価値をしっかりと語ってくださいました。メンターマッチングを井本さん自らが丁寧に担ってくださるということも伺い、信頼を感じました

事務局 松本さん(以下、松本さん): 私も同じ気持ちでした。初めての取り組みでしたのでプログラムについて理解しづらいこともあったのですが、丁寧に説明してくださり、不明点は率直に聞けるような井本さんの雰囲気に安心を感じ、それが決め手になりましたね。

 

—プログラムを通じてどのような効果を期待されていましたか。

 

本川さん: キャリアを積んだ社外の方と対話することで、内省したり、キャリアを考えるヒントをもらってほしいというのが一番の期待でした。当社でも1on1の取り組みは進めているのですが、「キャリアの話をすることを遠慮してしまう」「つい業務の話に終始してしまう」という声もあって。社外の方だからこそ話せることや、気づけることがあるのではないかと考えました

もう一つは、同年代や同じステージの仲間同士でつながりが生まれれば、今後も社内でキャリアを築いていく中で互いに応援し合えるようになれたらと思ったからです

 

—今回、参加者は公募で募ったとお聞きしました。

 

本川さん: はい、公募にしました。当社では公募を取ることがあまりなく、通常は研修に指名で参加してもらうことの方が多いんです。そんな中で、果たして手を挙げてくれる人がいるのかという不安はありましたが、自分から参加したいと意思表明すること自体に大きな意味があると思っていました

 


プログラム参加者の体験談

 

—どのようなお気持ちでプログラムへの参加を決めましたか。

 

参加者 添田さん(以下、添田さん): 公募の案内が来た時、まだ詳しい内容は書かれておらず、これまでにない新しい試みなのだろうと思いました。不安がなかったわけではないですが、それ以上に、このプログラムが持つ可能性に惹かれました。

これまで私は家庭と仕事を両立しながら、自分のキャリアをどう進めていけばいいのか、どこかモヤモヤしたものを感じながらも、日々を回すことに精一杯できちんと向き合えずにいました。社内のキャリア面談もしていただいていましたが、質問項目には答えても、自分の人生をどうしたいのか、進みたい道はどこなのか、そこから逆算して今何をすべきかをじっくり考えたことがなかったと気づいたんです

今回のプログラムに参加すれば、自分のこれからについて、じっくりと向き合える機会になると思いました。それに、キャリアを積んだ社外の先輩と話せるチャンスは滅多にないと思い、参加を決めました。

 

参加者 渡邊さん(以下、渡邊さん): プログラムの案内をいただいた時、会社に入ってもうすぐ10 年が経とうとしている中で、次の10年をどうしていくかということを考え始めていたタイミングでした。

私は、普段から周りの方によく相談にのっていただくのですが、どうしても身近な相談相手は男性になることが多くて。もちろん男性だから相談しにくいということはないのですが、やはり女性の視点からの意見も聞いてみたいと思う場面があります。社内の女性にも相談に乗っていただくのですが、「よりいろんな方の意見を聞いてみたい」という気持ちはずっと持っていて。そのような時にこのプログラムの案内が届き、迷わず申し込みました

公募という形も魅力的でした。自ら手を挙げて参加される方たちはどんな方だろうというワクワク感とそんな方たちと繋がりが持てるかもしれないという期待もありましたね。

 

—メンタリングではどのような経験をされましたか。

 

添田さん: 1回目のセッションで、メンターの方がチームに接する上で「声かけを大切にする」「期待していることを最初にはっきり伝える」ことを大切にしているとおっしゃっていて。自分も部下とのより良い関わり方を模索していたので、シンプルなことではあるのですが、すごく心に刺さりました。

また、キャリアについて心の中では考えていても、上司や周囲にアピールすることをこれまでほとんどしてこなかったことにも気がつきました。「声を上げないと相手には伝わらない」と言っていただいて、確かに、自分の中で完結させていても外に発信しなければ伝わらないことはとても多いなと。周りの人に対して声に出して伝えることの大切さに、改めて気づかされました

1回目のセッション後、「次までに自分がどう働いていきたいのかを考えておいてね」という宿題をもらいました。そして、国内外を問わずアクティブに業務対応をしたいこと、チームで助け合う働き方をしたいこと——そういったことが少しずつ言語化されてきて、モヤモヤしていたことが自分の中で少しずつクリアになっていく感覚がありました

 


前編では、プログラムの導入背景と、参加者がプログラムへの参加を決めたきっかけ、メンタリングの体験についてお話しいただきました。後編では、引き続きメンタリングの体験についてと、プログラムを通じて得られた変化、座談会での学び、今後の展望についてお届けします。

 

(取材日/2026年3月25日)

執筆:田中亜由美