キャリアと自分自身に向き合う場所:「社外メンタープログラム」体験談(後編)

三井金属株式会社様では、社員一人ひとりが自分らしくキャリアを築いていける環境づくりを目指し、今回初めて「社外メンタープログラム」を導入されました。前編では、プログラムの導入背景と、参加者がプログラムへの参加を決めたきっかけ、メンタリングの体験についてお話しいただきました。後編では、プログラムを通じて生まれた変化と、座談会での学び、今後の展望についてお届けします。

 

【対談】

◾️人事部 ダイバーシティ推進室 副室長:小宮様

◾️事務局:本川様、松本様

◾️参加者:添田様、渡邊様


プログラム参加者の体験談

 

—メンタリングではどのような経験をされましたか。

 

参加者 渡邊さん(以下、渡邊さん): 3回を通じて、だんだんと話す時間軸が未来へと移っていきました。1回目は現在の仕事との向き合い方を中心に話し、2回目・3回目になるにつれて、10年先を見据えて、仕事とプライベートの両方で何を大切にしていきたいか、そしてそれをどうすれば実現できるかという話に移っていきました。

メンタリングでは、今感じている悩みや解決したいことを話すので、どうしても悲観的なスタンスになりがちです。しかし、メンターの方はそうした気持ちにしっかり寄り添いながら丁寧に話を紐解いてくださって。気づいたら「そんなに悲観的にならなくてもいいんじゃないかな」と自分自身が思えるようになっていました。セッションが終わってみると、「こうした方がいいんじゃない」ということもちゃんと言っていただいていて。寄り添ってくれるところと、自然と前を向かせてくれるところ、そのバランスが絶妙で毎回とても貴重な時間になりました。

 

—非常に有意義な時間だったのですね。セッションに臨むにあたり、何か準備や心がけていたことはありますか?

 

渡邊さん: せっかくプログラムを受けるので、すぐに本題に入れるように事前準備をしっかり行いました。メンターの方に自分の「人となり」をより早く知ってもらうため、過去の研修で作成した自己分析シートや、大切にしている価値観をまとめた資料などを集めて事前にお送りしたんです。おかげで初回から、昔からよく知ってくださっている方と話しているような自然な雰囲気で進められました

参加者 添田さん(以下、添田さん): 私は、最初はメンターがどのような方なのかを知るように努めました。共通点を探しながら、自分と違う部分も含めて学ぶ姿勢を持つことで、視野が広がると考えたんです。そして家庭を持っているという共通点を見つけたり、苦労してきたことや乗り越えてきた経験などを共有したりと、初回からお互いに自己開示できて、信頼関係が早い段階からできたと感じています

2回目・3回目では、ふわっとした悩みをぶつけるだけでなく「こういう場面ではどう行動されましたか」といった形で具体的な質問を準備して臨むようにしていました。受け身で与えてもらうのではなく、自分からつかみにいく姿勢が、メンタリングをより充実したものにしてくれたと感じています

 

—社外のメンターということに、何か感じることはありましたか。

 

渡邊さん: これまで身近な方にはよく相談してきたのですが、全く関係のない相手に1から話すのは初めての経験でした。これまで積み上げてきた関係性がないからこそ、フラットにお互い話せたのがとても新鮮で。社内の方に相談すると、無意識に社内での関係性や期待が込められたり、家族に相談するとどうしても家族の価値観が入ってきたりするものだと思うんです。でもメンターの方にはそのようなことが一切なく、ニュートラルに今の私自身に向き合ってくれているという感覚がありました。自分が今どのように物事を捉えているのかを整理しながら、自分の言葉だけをベースに一緒に考えてもらえる。そういう寄り添い感がありました

添田さん: わかります。社内の方に相談する時はどこまで話していいかという気持ちが生まれてしまいますし、相談を受けてくださる方も、お互いの立場や会社のことも考えながらアドバイスをくださると思うんです。けれど、社外の方だからこそ、そういったものが一切なくフラットに本音を話すことができました

 

 

—プログラム終了後、ご自身にどのような変化を感じましたか。

 

添田さん: 今まで、チームの方へのより良い接し方を模索していましたが、業務の目的や取り組み方への姿勢など、期待することをはっきり伝えられるようになりました。

また、プログラム終了後にはメンターの方からフィードバックをいただいたのですが、その言葉は今も心の支えになっています。私がこれまで自身の短所ととらえていた点について、「前向きな姿勢であって良いところだと思う」と言っていただいて。自分では欠点と思っていたことを強みとして見てもらえたことで、気持ちがすっと楽になりました。それ以来、「今の自分の考え方でいいんだ」と思いながら業務に向き合えるようになっています。

とはいえ、こうした変化はこれから徐々に現れてくるものだと感じています。モヤモヤが晴れたこの感覚や、ここで得た気づきを大切に持ち続けながら、これからも少しずつ自分を育てていきたいですね。

 

渡邊さん: 私も、劇的に何かが変わったというよりも、自分の意識がじわっと少し強くなったというようなイメージですね。プログラムを通じて、自分が今後の人生で大切にしたいことがクリアになってきました。ここから自分で考えて行動していく——それがメンタリングというものなのかなと思っています。これからは、自分の考え方や価値観を自分の言葉や行動で周囲に伝えていきたいです。

 

—個別のメンタリングだけでなく、参加者同士の座談会もあるとか。いかがでしたか?

 

渡邊さん: 座談会でみなさんの話を聞く中で、同じような悩みを抱えていることがわかり、共感できる場面がたくさんありました。プログラムが終わった今も、今回つながった参加者の方たちとは、悩みを共有したり助け合ったりできる関係性が作れたと感じています

 

添田さん: そうですね。それに、それぞれの考え方の違いを知れたことも、大きな学びでした。座談会で自分の働き方への考えを共有した時、「それは共感できません」とはっきり言ってくださった方がいて。最初は少し驚く気持ちもありましたが、異なる考え方があることも、それを伝えてもらったことも、良いことだと思いました。違いをそのまま受け入れられたのは、座談会という場の安心感があったからだと思います。最後の振り返りでは、それぞれが得たものを伝え合い、「なるほど、そういう気づきがあったんだね」と共感できる場面もあって。メンタリングとはまた違う形で、視野が広がる時間でした

 


プログラムを終えて感じること

 

—今回のプログラムを振り返って、事務局としてどのような印象をお持ちですか。

 

事務局 本川さん(以下、本川さん): メンタリングで素の自分をさらけ出すことがフィードバックの質向上につながると思っていたので、参加者の皆さんがどこまで自己開示できるのかできるのか、正直なところ不安があったんです。

しかし、その心配はすぐに杞憂だとわかりました。オンラインかつ初対面の方も多いという状況でしたが、なぜ参加しようと思ったのか、何を期待しているのかをしっかり話してくださって。その様子を見て、この6名なら大丈夫だと確信しました。

座談会で皆さんの言葉を聞いていると、ただ表面的に話しているのではなく、自分の内面にちゃんと向き合おうとしている姿が伝わってきました。時折声が詰まったり、涙が溢れてしまう場面もあって。その姿が本当に素晴らしいなと感じましたし、事務局として、このプログラムをやってよかったと心から思えた瞬間でもありました

また、井本さんが率先して自己開示してくださり、オンラインとは思えないほどパワフルに皆さんを巻き込んでファシリテートしてくださるので、初対面同士とは思えないような場となりました。素晴らしいマッチングや、座談会での学びも、アーチキャリアさんだったからこそだと感じています。

事務局 松本さん(以下、松本さん): 参加者の皆さんは日々の業務で活躍されており、悩みとは無縁のようにも見える方々でした。一方で、そうした方々であっても、それぞれに悩みや思いを抱え、一人ひとり異なるストーリーを持っていることが感じられました。それを3回という期間の中で少しずつ解いていこうとする姿は、本当に感動し、私自身も勝手に励まされていました。

また、今回改めて感じたのは、公募にしたことの意味でした。このプログラムは、受け身では成り立たないものだということを実感しましたし、だからこそ手を挙げて来てくださった皆さんの存在が、プログラムをより良いものにしてくれたんだと思っています。

 

—実際に実施してみて、どのような成果や課題を感じましたか。

人事部 ダイバーシティ推進室 副室長 小宮さん(以下、小宮さん):初年度は公募制で実施し、意欲と課題意識を持った社員が参加したこともあり、キャリアの言語化や行動変容といった点で、想定以上の成果を感じています。実際に、「やりたいことを周囲に伝えられるようになった」「自分なりの判断軸を持てるようになった」といった声もあり、一人ひとりが主体的にキャリアと向き合うきっかけになったと受け止めています。

特に印象的だったのは、「社外だからこそ深い内省ができた」という点です。これまでの関係性にとらわれない対話の中で、自分の考えや価値観を率直に見つめ直すことができたという声が多く、社外メンタリングならではの価値を実感しました。また、参加者同士のつながりも自然に生まれ、心理的な支えになっている様子も見られました。

一方で、いくつかの課題も見えてきました。プログラムで得た学びや気づきを上司と共有し、日常の業務や成長支援につなげていく部分については、まだ十分とは言えない面があります。また、今回のように高い意欲を持つ層だけでなく、より幅広い層にどのように機会を届けていくかも今後の検討課題です。

 

—今後の展望についてお聞かせください。

 

本川さん: 今回の結果を受けて、第2期の実施を予定しています。第1期生の皆さんにも、可能であれば引き続き参加していただき、横のつながりだけでなく縦のつながりも作っていけると、大きなインパクトが生まれるのではないかと期待しています。

今回は女性社員を対象に実施しましたが、キャリアについて社外の方と話す機会を必要としているのは女性だけではないはずです。社員一人ひとりが自分のキャリアや人生について深く考え、前向きに歩み続けられる環境を整えていきたい。今はまだ小さな一歩ですが、ここからしっかりと仲間を作りながら広げていきたいと考えています。

小宮さん:今後は、本プログラムを単発の取り組みで終わらせるのではなく、継続的な仕組みとして発展させていきたいと考えています。例えば、メンティとして参加した社員が将来的に社内メンターとして次の世代を支えるといった循環を生み出すことで、組織内にも学びと成長の文化を根付かせていきたいと思っています。

また、メンタリングで得た気づきを職場での成長につなげていくために、上司を含めた支援のあり方についても工夫を重ねていきたいと考えています。個人の変化を組織の変化へとつなげていくことが、今後の重要なポイントになると感じています。

社外メンタリングを通じて、一人ひとりが自分らしいキャリアを主体的に描き、その実現に向けて前向きに行動できる状態をつくるとともに、その積み重ねが組織全体の活力や多様性の広がりにつながっていくことを期待しています。

 

(取材日/2026年3月25日)

執筆:田中亜由美