働く女性たちの未来を拓く:「社外メンタープログラム」体験談(後編)

日清製粉グループ様は「女性社員の活躍が企業の成長を支える重要な要素」という信念から女性の雇用促進を進めてきました。しかし、新卒採用で女性社員の割合が増え始めたのは10数年前のこと。現在、その世代の社員が管理職やマネージャーに昇進し始めていますが、ロールモデルとなる先輩が少なく、多くの女性社員が悩みながらキャリアを築いている状況に課題を感じていました。そんな現状を少しでも変えたいという思いから、グループ会社の垣根を超え、初めて「社外メンタープログラム」を導入頂きました。
今回は、そんな日清製粉グループ様の社外メンタープログラム実施について、執行役員の坂本様、本プログラム事務局、実際に参加頂いた一部の社員(3名)の皆様にお話を伺いました。

プログラム導入の経緯や参加したきっかけ、メンターの印象については前編をご覧ください。
後編では、プログラムでの体験や感想、今後の展望をお話しいただきました。

【対談】

◾️日清製粉グループ本社 執行役員 坂本様

◾️事務局:日清製粉グループ本社 落合様、石塚様

◾️参加者:波多野様、小山様、仮屋崎様

 


プログラム参加者の体験談

 

—メンタリングではどのような経験をされましたか?

 

波多野さん : メンタリングを受ける前の私は「あれもできない」「これも無理だろう」と、自分で視野を狭めてしまっていました
でも、メンターさんから「こうあるべき」にとらわれないで、一度、自分が本当にやりたいことは何かを考え直してみたらとアドバイスをいただいて。
改めて自分がやりたいことを考えてみると、やりたいことはしっかりと自分の中にあるということに気づいたんです。
常に「これに対してはこうしなきゃいけない」と考えてしまっていた私の思い込みを、メンターさんがパッと取り払ってくれて、色々な可能性が広がったように感じました

 

仮屋崎さん : 私も子育て中なので、これまでのように長期出張のある働き方はできないだろうと思っていました。けれどメンターさんに「それ、できないことはないんじゃないの?」と言われてハッとしました
メンターさんがご自身の経験を元に「子どもが何歳くらいの時にはある程度手が離れ、何歳ごろには出張もしていたよ」という話をしてくださり、自分の中でも長期的なプランを描けるようになりました。
今は、子供が何歳の時にはこのような仕事をして、その後どうキャリアを進めるかを具体的に描けるようになりました

 

小山さん : 私は結婚したけど出産はどうするか、出産したら仕事は続けられるのか辞めるべきか…と漠然としたモヤモヤを抱えた状態で始まりました。
メンタリングでは、初回から「もし子どもができたら、子どもからどんなお母さんに見られたいですか?」と踏み込んだ質問をされたんです。
話しているうちに、自分が「1人の社会人として会社で働き、後輩から慕われる、そんなかっこいいお母さんでありたい」と思っていることに気づきました
そうすると「心を決めて総合職で働き続けよう」と思っていたことに気が付いたんです。

初回で「自分はこうありたい」という気持ちがクリアになったので、2回目、3回目のメンタリングでは「実際に自分がやりたいことは何だろう」「そのキャリアを描くために、今、自分に何ができるだろう」と、モヤモヤが晴れた状態で具体的な行動を考えることに注力できました

 

—プログラム参加後、環境に変化はありましたか?

 

波多野さん : メンターさんが思い込みを取り払ってくれたので、海外出張の話が出た時、まずはどうしたら行けるかを考え、夫に相談してみたんです。
すると「何とかするよ」と快く協力してくれ、来月、出産後初めての海外出張に挑戦することになりました。
きっとメンターさんと出会っていなければ、出張は無理と諦めてしまっていたと思います。
私にとって一歩踏み出すきっかけになりました

 

仮屋崎さん : 私は3回目のメンタリングで「意思表示をすることが大切。それが目標に近づく第一歩だよ」とアドバイスをいただき、今もそれを意識し続けています
在宅ワークでお互いに姿が見えない状況で仕事をする時間も増えたので、予定やタスクを共有して、自分の取り組んでることを可視化することも心がけています。それによって急な休みが必要になった場合に、自分だけでなく周囲の人も戸惑わずスムーズに対応できるようになりました。
また、多くの業務を抱えて忙しいと感じるタイミングでは、上司や同僚が「大丈夫?」と気にかけてくれるようになり、自分の発信をちゃんと見てくれているんだなと感じます。

 

小山さん : メンタリングを受けて自分の考えがクリアになったので、プログラム終了後に上司との面談をセッティングしてもらい、今後のキャリアについて「このようなチームなら活躍できると思うから、このような職種に取り組みたい」と具体的に希望を伝えることができました
まだどうなるか分かりませんが、そのために勉強をしたりと行動につながっています

 

—キックオフや座談会など、皆さんで集まる場の印象について教えてください。

 

波多野さん : 座談会は、参加者同士がそれぞれのメンターから得た気づきを共有できる貴重な場でした。自分が考えきれていなかった視点に触れることができ、大きな学びになりましたね。
また、自分の体験を言葉にすることで「自分はこんなことに気づいたんだ」と改めて認識することもできました。単にメンタリングを受けるだけでなく、自分の中にしっかり定着させるためにも良い機会でした

 

仮屋崎さん : そうですね。座談会ではメンタリングを重ねるごとに皆さんの成長や心の変化を感じることができ、とても良い刺激になりました

また、参加者は同じグループ会社ですが、会社は別々。座談会で別の会社のことを知ることができ、つながりができたことはとてもよかったですね。毎回、話しやすい空気を作ってくださった事務局やアーチ・キャリアさんには感謝しています。

 

小山さん : 私の職場は男性が多く、お客様も男性が中心なので、キャリアについて相談できる先輩はほとんどいなかったんです。でも、この場で他のグループ会社の方たちと話をして「同じような状況で頑張っている人がこんなにいるんだ」と気づけたのは、大きな励みになりました


プログラムを終えて感じること

—今回のプログラムを振り返って、事務局としてどのような印象をお持ちですか?

 

事務局 : メンタリングを始める前は、皆さんそれぞれに悩みを抱えつつも、うまく整理しきれない状態だったと思います。でも、3回のメンタリングを通じて、みなさんが前向きになり、自分の考えを発信できるようになった姿に本当に感動して涙がこぼれましたメンタリングが個別に進むだけではなく、座談会の場で共有したり、言語化して発言することができたことにとても意味があったと思います。プログラム終了後のアンケートには、「メンタリングも良かったけれど、座談会もあって本当に良かった」という声もあり、今後もこのような場を継続して作っていきたいと考えています。

2年間にわたる企画の中で、アーチ・キャリアさんには本当に丁寧に対応していただき、心から感謝しています。
社外メンタープログラムに関することだけでなく、このプログラムを通じて、またプログラムを終えた後も社員一人ひとりの可能性やポテンシャルをどう引き出していくのか、会社としてどう支援すべきかという観点でも、アーチ・キャリアさんに長期的な視点でアドバイス頂いたり。
導入前から実施中も常に伴走していただいていると感じられて、とても心強かったですね。

 

—実施前には社外に目が向くのではという懸念もあったそうですが、実際にはいかがでしたか?

 

事務局 : 実際に進めてみると、お互いの頑張っている姿に励まされて、「会社をもっと良くしていこう」と言ってくださる方も多く、アンケート結果なども含め、予想以上の盛り上がりや前向きな発言など、その成果に経営陣も驚いていました。

社員一人ひとりの気持ちを大事にしたいと考えていたことが、参加者のプログラム参加への覚悟を強くし、真摯にキャリアに向き合うことで、結果的に参加者の皆さんの会社や仕事への思いや情熱を再確認する形になったのではないかと感じています。

 

—最後に、本プログラムのご感想や今後の展望についてお聞かせください。

 

坂本さん : プログラムの実施を通じて、先輩社会人である社外メンターたちとの貴重な交流やサポートが、次のキャリアステップに向けた自信と決意を芽生えさせたと感じています。
今後は、勇気を持って新たに挑戦する姿勢を後押しすることが会社として重要であると考えています。
彼女たちの成長の道を築くためにも、しっかりと経営陣や各職場とも連携しながら本格的で本質的な女性活躍推進をしていきたいと思っています。

 

 

 

 

(取材日/2025年2月19日)
執筆:田中亜由美