一人ひとりに寄り添う新しいキャリア支援のかたち:「社外メンタープログラム」体験談(前編)
JR西日本様では、社員一人ひとりの多様な個性の掛け合わせにより、新たな価値を生み出し、将来にわたってすべてのステークホルダーに価値を提供し続けることを目指し、ダイバーシティ推進に取り組んでいます。なかでも、女性活躍推進については、ダイバーシティにおける重要課題と位置付けています。
今回、同社では初めて「社外メンタープログラム」を導入しました。社外のメンターと対話することで、新たな視点や解決策が見つかるのではと期待して導入したこの取り組み。プログラムを通じて得られた気づきや成長は、参加者にどのような影響を与えたのでしょうか。
プログラム導入の背景や参加者の体験談をじっくりと伺いました。
【対談】
◾️ダイバーシティ推進室長 中山様
◾️事務局:白壁様、山本様
◾️参加者:服部様、福本様
「社外メンタープログラム」導入の背景
—今回、社外メンタリングプログラムを導入された背景について教えてください。
中山さん:当社では経営戦略の一環として、ダイバーシティ推進に力を入れています。その中でも特に、女性の活躍を後押しする取り組みは重要なテーマの一つです。女性社員が働きやすい環境整備や成長支援の取り組みの積み重ねにより、現在ではすべての分野で女性社員が活躍していますが、一方で女性管理職やリーダーについては、世間の水準に比べて割合は少ないと言えます。様々課題はありますが、その中でも「子育てとの両立」に悩む社員は少なくありません。管理職やリーダーとしての経験・能力は十分にあるのに、キャリアアップしていく上で「子育てとの両立」がネックとなっている社員の後押しをどうにかできないかと考えていました。また、子育てに関する悩みや不安は個別性が高いため、一律的ではなく、一人ひとりに寄り添った支援が重要だと考え、今回のプログラム導入に至りました。
—なぜ、弊社にご依頼いただいたのですか?
山本さん:プログラムの検討段階では、社内での研修も含めさまざまな選択肢を模索していました。そんな中、アーチキャリアさんが講師を務めるメンタリング講座を受講する機会があり、講師の方のキャリアや仕事への姿勢に感銘を受けたんです。「このような方が社員のメンターとなってくださったら、社員にとって良い刺激と学びを提供できるのではないか」と思い、導入を決意しました。
—社外メンターを活用することで、どのような効果を期待しましたか?
中山さん:社内メンター制度はこれまでに実施したことがあり、メンタリングそのものの効果は実感していました。しかし今回初めて社外のメンターを起用するにあたって、私たちの組織特有の悩みに対応できるだろうかという不安は正直ありました。それと同時に、社外のメンターだからこそ得られる新しい視点や気づきがあるのでは、という期待もありましたね。
当社では、子育てをしながら活躍している管理職がまだあまり多いとは言えません。そのようなロールモデルが身近にいないことで「時間的な制約がある中で管理職として活躍するイメージが湧かない」といった声もありました。仕事と家庭の両立方法や優先順位のつけ方などのアドバイスをいただいたり、社外の客観的な評価により自身の強みに気付くことで、「新たな挑戦をしてみても良いかもしれない」と思えるきっかけになればと期待していましたね。
プログラム参加者の体験談

—プログラムの参加が決まった際、どのようなお気持ちでしたか?
参加者 服部さん(以下、服部さん):私は2人の子どもを育てながら夫婦共働きの生活を送っています。復職して2年が経ち、仕事と家庭を両立する中でモヤモヤが溜まっていて。お声がけいただいた時は、どうしたらいいのか悩んでいたタイミングだったんです。職場には女性の先輩が少ないので、自分と同じような境遇でキャリアを積んできた方々から直接お話を伺える機会は、とてもありがたく感じました。
ただ、業務が忙しい中で本プログラムがどれほど負担になるか、どのような人がメンターになるのか、わからないことも多く、不安もありました。しかし会社がこうした貴重な機会を用意してくれたので、「自分にとって新たな学びになるかもしれない」と思い、前向きに参加しました。
参加者 福本さん(以下、福本さん):私も働き方について悩んでいた時期で、上司へ相談をしていたところでした。そんな中で今回のプログラム参加へ声をかけていただき、「会社が私の悩みに向き合おうとしてくれている」と感じたことがとても嬉しかったです。何か良い変化や学びが得られるのではないかという期待もあり、参加を決めました。
—メンタリングではどのような経験をされましたか?
服部さん:メンタリングを通じて、自分自身と向き合う貴重な時間を持つことができました。働き始めたばかりの頃と、子どもが生まれてからでは環境や価値観、優先順位が大きく変わっているはずです。しかしこれまで日々の忙しさに追われて深く考える余裕がありませんでした。
特に印象に残っているのは、「ビッグロック」のお話です。メンターの方から、「あなたにとって一番大事なものは何なのか。自分にとって大事な大きな石から順番に瓶に詰めていくんだよ」と教えていただきました。この話を聞いたとき、自分はそれができていなかったことに気づきました。育休復職後も、リュックの中にたくさん積み重ねたまま背負っているような状態になっていたんです。
ビックロックの考え方をもとに、まずは「自分にとって一番大事なもの」を改めて意識しました。そして、一度背負っている荷物をすべて外に出し、「これが一番大切」と思えるものから優先的に入れ直しました。そうすることで、自分が大切にしていることや優先順位が明確になり、それを実現するために具体的に何をしていくべきかが整理でき、不要なものは思い切って手放そうと思えるようになりました。
—福本さんは、どのような経験をされましたか?
福本さん:最初は、ただ悩みをじっくり聴いてもらっているだけのような感覚でしたが、不思議といつの間にか納得感のある答えが見つかっていて驚きました。全3回のセッションは本当にあっという間でしたね。
私は、「子どもにこうしてあげられていない」「後輩にもっとこうしたいのに」というように、人との関わりの中で「自分はこうありたい」という理想と現実のギャップに悩むことが多くありました。そんなとき、メンターの方から「相手に直接聞いてみたらどう?」と言われ、ハッとしました。自分の理想にとらわれるのではなく、相手が本当に求めていることを直接聞いたり観察したりすることで、必要以上に自分を追い込まず、もっと気楽に、そして的確に向き合えるんだって気づいたんです。
さらに、個別の悩みや直面してる短期的な課題に対してだけではなく、その背景にあるモヤモヤした不安の根源や、自分に対する課題感といった本質的な部分を言語化することができたのも大きな成果でした。1人で考えているとどうしても思考が狭くなりがちですが、メンターの方から「こう考えたらどう?」と第三者の視点で提案していただき、腑に落ちる瞬間が何度もありました。最終的には、自分の課題を把握し「こうしてみよう」と前向きに行動に移せるアプローチまで、具体的に描くことができました。
前編ではプログラム導入の背景と、参加者の体験を話していただきました。
後編では、引き続き参加者の体験とプログラムの印象、今後の展望を伺います。
(取材日/2025年10月15日)
執筆:田中亜由美
